徒然なるままにニューヨーク生活日記

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<<   作成日時 : 2007/12/20 23:21   >>

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最近日本で話題になってきたワーキングプア。アメリカの貧困状況、社会政策を見ていると他人事とは思えない。かくいう私もアメリカの政府において政策を策定し、実行していく立場にある訳だが、資本や市場の理論だけを振りかざし、社会政策を策定し続け、バブル経済から這い上がるため、法の改正を急進的に繰り返してきた日本。海外から見ていて、まるで明治維新前後の日本のような感覚である。神仏判然・廃仏毀釈によって古きよき日本の文化を捨てようとし、文化保護論的に見て失策だったと悪評が高いたあの時代に酷似しているのは気のせいだろうか。小泉政権(小泉さんだけを悪く言う訳ではなく、支える政治家や官僚にも大局観がなかったことは否めない。)を通じて、日本経済は見事に息を吹き返したかに見えた。しかし近年の相対貧困率を見てみると一目瞭然だが、雇用統計結果は完全にアメリカ化しつつある。OECDの統計によるとGDPナンバー1,2を牛耳るアメリカと日本が、仲良く相対貧困率ワースト1,2を占めている。
負の産物は底の見えない格差だ。所得再配分政策という、資本経済の中でも市場の失敗を避ける上で、もっとも政府の力量が見られるといわれるミクロ経済政策で、日本はその失策を打ってしまった。これには様々な要素が絡むため、小泉政権だけの産物というわけではない。事実この状況を小泉政策だけに強い相関関係を求めることは難しい。むしろ90年代後半より重ねて行われた労働法の改正に端を欲する非正規雇用の拡大等、不況を食い止めるための様々な政策が積み重なって起こした総合的な結果である。もちろん税制等は近年行われた調整であるが。環境問題など外部負経済に対してセンシティブな日本も、なぜかそこには目が行き届いていなかった。悲しい現実だが一度生み出されたこの状況は負の連鎖を生み出し始める前に食い止めることが重要だが、重い機関車と同じで、走り出したら止めることが難しい。単に企業税率の問題や、労働法の問題だけではないからだ。
ここまでに打たれた政策全てがまずいとは思わない。現に企業利益は史上空前の含み益を保持し、すでにバブル時代のそれを抜いている。しかしその利益を支えてる根拠の大きな部分に非正規雇用の拡大と、企業側の福利負担の激減があることは明白な事実だ。利益を支えている最下層の人々が苦しんでいる。格差自体が問題だとは言わない。この点は小泉政権になんら異論は唱えない。しかしその状況分析が重要である。格差分布を見た時、最下層にいる労働層が、まともに生活すらできないような状況(アメリカの場合はこれに輪をかけて、医療保険制度が市場化されており、貧困はすなわち即健康的な不安=大病を患うと高額治療を受けず死ぬかしかない、に直結する。)は明らかに市場の失敗を防ぐことができない政府に非があるといわれても仕方あるまい。大げさではなく本当の話だが、今年に入って、ニューヨーク市で、貧困のため保険が受けられず、虫歯を放置していた幼児が、栄養失調により免疫力が落ちていたところへ、口内への細菌2次感染により死亡したニュースが話題となった。日本でそんな話想像できるだろうか?現在の日本の方向性は、そんな嘘みたいな話が現実のものとなる可能性があることを覚悟しなくてはならない。
働けど働けど食べるのにも苦労する。そんな労働社会の貧困に瀕する日本人の姿を想像すると、目頭が熱くなる。100%の確立論で物事を語るのは難しい。無論、なるべくしてホームレスになってしまう人もいるだろう。しかしこの流れ、そうと言い切れない。ほとんどは睡眠も削って努力しているのだ。私がニューヨーク政府に在職して、貧困地区の病院や学校区を検察を通じて知っている事例を見る限り、誰一人として怠けている人間はいないと断言できる。少なくとも私の知る方々は、尊敬に値する価値観で、必死に子供を育てようと尊厳をもって頑張っている。社会的コストを置き去りにし、こうした貧困層を「自己責任」と単純に切り捨てられる時代はもう終わった。働けばある程度の見返りが期待でき、貧しいながらも医療をうけ、安全な環境の居住区に住む。そして、将来を見据え、子供を安全に学校に行かせられる。日本ではどの小学校区からも、大抵東大はじめ、一流大学を狙えるすばらしい教育環境が整っている。アメリカでは生まれ育つ居住区=貧富の差=教育の質として見事にその将来の道を制約する。日本もそうなる時代がくるかもしれない。金があれば私立学校。日本円にして年間400万払う私立学校だって、ここニューヨークでは普通だ。金が無ければ質が悪くても公立学校にいかざる得ない。ドラッグに拳銃、勉強どころか生命の危険にすら脅かされる可能性すらある。日本の美徳。それはこうした部分が最低限保障されていることだった。地味だが普通に生活ができる。という最低ラインを保障してくれた古き良き日本の労働経済、社会政策は、ことごとく構造改革という名の下、破壊されていった。この日本の美徳を象徴するのが「緻密な働き方」と「質」にみることができる。今日の記事内容からは少しずれるので紹介しないが、私は日本で7年、アメリカでもすでに4年働いているため、アメリカの私企業、政府で働いてみて、愕然とした経験を幾つか持っており、そうした違いをいつか丁寧に紹介したいと思う。
さて、話を元に戻し、アメリカは上位5%が総資産の約六割を所有する一方で、13%が貧困ライン以下(大体120万円以下)という超格差社会。日本が政策に打ち手をくわえなければ、この統計的様相に近づきつつあることは間違いない。ニューヨークで医療政策や教育政策をてがけていくうちに、貧困層の大変な状況が見えてきた。日本と違い、ニューヨークでは貧困即ち生命の危険すら意味する。金がなければ良い学校区に住めない、そして食料が買えない。学業が尊重されない環境では、ダイヤの原石を持つ子供たちも伸びないことは、統計上明らかだ。以前Harlem地区でGifted(日本で言うIQテスト等で非常に知能が高く、将来有望と認められる子供)とランクされた子供ですら、当該地区の環境により自ら進学を選ばない子供たちが多くいる。高等学歴は時間がかかるため、親がこれを良しとしない雰囲気を作ることも多い。ひとたび高等学歴をあきらめれば、その先に必然としてあるのが、高等な技術を必要としない、労働集約的で安価な雇用への道へ進むしかない。雇用がグローバル化すれば、海外移転も行われ、技術移転が容易で、代替可能な作業は、より低賃金化していくという悪循環。これが貧困の背景に根付く、悪のスパイラル。即ち抜けがたい恐ろしさなのである。また安全な食料が買えなければ当然安価なジャンクフードに走るため肥満から糖尿病になりやすい。不健康問題は、更に労働力に陰りを落とし、貧困層に深刻な影響を与える。何故ならば、往々にして貧困層は前述した高等学歴を有する確率が環境面から低く、故に肉体労働、労働集約的な作業に従事している可能性が高い故、こうした健康障害は、即働く術を失っていくことに直結するからだ。また食料が先か、暖房のオイルが先か、冗談ではなく、死活問題として、貧困地区の居住棟ではこうした問題に向き合っている。冬には餓死、凍死の可能性もある。またそれらを最後に食い止める医療。これも酷い。例えばアメリカでは、眼科、歯科、主治医制度、専門医制度、処方箋制度、信じられないかも知れないが、全て市場化されていて別サービスである。前述したが、Moore監督のSickoは一部誇張されている面もあるが、WorkingPoorの根幹を生み出す医療政策のまずさを克明に表現している。

Sicko (Ws Amar)

アメリカの医療は、日本のようにただで受けられるなんてものは何一つない。全て価格リスト化されている。高い医療保険に入れば、それだけ質の高い医者の登録する病院で見てもらえる可能性もあがる。今日本の在米コミュニティ、特に高齢女性層で問題になりつつあるのが、高齢化して、こうした社会政策の違いを知らずに、一気にホームレスや生活保護対象者になる日本人層が高齢者層にいるということだ。日本人は大変安全な社会政策の下危機意識が低いといわれている。(もう今となっては違った様相を呈しているが。)多くの日本人がアメリカの過酷な社会福利制度や医療保険制度(ちなみにアメリカに社会年金を補足する企業年金制度があるという保証なんて100%ない上、国民皆医療保険もない)を知らずに渡米してくる。海外駐在等の比較的富裕層や修士号以上の高等学歴留学層は別として、単独語学勉強等で渡米し、現地のアメリカ人男性と結婚、晩年夫に先立たれた後、気づいてみればそうしたことを知らずに病気を煩い、保険も、年金ももらえないことに50歳になってから気づくケース。夫が死亡したからといって、妻が年金を代わって受け取りなんて制度はアメリカにはない(一部私の嫁のGrandmotherのように2次大戦等、軍役により死亡したケースを除くなど例外はある)。其の時点ですでに時は遅く、重なる医療費で破産し、一気にホームレスへ。という日本ではまずあり得ないパターンで貧困に落ちいるケースが増えているということが徐々に話題になりつつあるが、ある意味日本の未来を描いているようである。というのも、今日本の国会で騒がれている医療保険制度の一部委託化。これもまたアメリカの真似。ニューヨークの”日本人ホームレス化”騒動を見ていると、この改正が通過すると、これと似た現象が、現在のネットカフェ現象からなるホームレス予備群に加え、晩年ではじめるのではないか。もっともアメリカの社会保障年金制度と日本の国民年金制度も違うし、医療保険制度、税金制度、医療委託化の内容も違うので単純比較ではなんともいえないが、この医療政策の改正が間違った方向に行ってしまうことだけは避けて欲しい。
最後になるが、コロンビア大学で政策を学んだ際、いつも忘れてはいけないと心に誓ったものは、冷静な分析力を駆使しつつも、常に熱いハートを持ち続けるということだった。偽善ではない。だってそうであろう。そんな酷い世の中に自分の大切な家族を残せますか。もし自分たちの子供が、そんな世の中で悲鳴をあげながらいきていくことを考えれば、他人事ではないはず。私の原点は自分勝手なようだがいつも家族だ。まずみのまわりにいる人を守れなくて、周囲や地域、市、国、世界を変えることなんてできない。よく国連や行政機関で働く官僚(私は国連で働いた経験もあるし、現在は米国政府で働いているから確信して言える。)が、世界を変えたい。などと格好のいいことを言いながら、実際個人レベルの言動を見ていると、社会の流れも分かっていなければ、家族を大切にしている様子もなく、また同僚に対し横柄な方々を良く見る。資金配分感覚やプロジェクト管理能力といった実地経験のない学者肌で”勝ち組ですが何か?”といわんばかりの方々。「世界を変えるんだ!」などと、知識も経験もないが、勢いで「人助けは重要」などととんちんかんで金の無駄遣いに近い政策に力を入れようとする「体育会系偽善系」の方々をみかける。それでは駄目だ。信用なんてできない。家族やごく身近にいる同僚を大切にできないような人が、まして他人の痛みを分かるのか?何故国や世界を変えられるのか?また勢いだけでこの複雑な事象を解決できるか?やはりある程度の経済学的な基礎や実践での経験による地に足のついた政策、また、「本当に正しいと断言できるか?」という問に、迷い無く答えられないような行政官、政治家には、この複雑な事象を任せられない。そうでなければ、単なる自己満足に近い偽善ではないか。と憤慨させることになるだろう。
今日本の行政に求められるのは、大局観ある政策(社会的コストや所得再配分政策も踏まえた)の打ち手と、そうした政策が打てる熱いハートを持った行政官や政治家の登場(それには国民である日本の方々が、それなりに勉強してきちんと投票活動、選挙に参加するということも重要だ。)それと強い指導力だろう。今後の日本の未来に新たなリーダーシップを期待する。
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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。
大変興味深い記事でとっても気になる話題です。
私の周りにシングルマザーで、“働けど働けど貧しい生活”の方がいます。アメリカ社会の超格差社会を初めて感じました。こらも新鮮なアメリカ社会の情報を楽しみにしています。
Apple
2007/12/23 01:16

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